◆わさび栽培
先日、地元でわさびを栽培している社長さんにお会いしました。
畑の真ん中に建てたビニールハウスでわさびを栽培しているのですが、長年にわたる研究と独自のノウハウで素人でも質の高いわさびを簡単に栽培できる仕組みを構築しています。
自社で栽培して直接消費者に販売も行っていますが、栽培ノウハウと栽培プラントの施工までも販売をしています。
初めてお会いしたのですが、しばらくお話を聞いた後で栽培場に連れて行って頂き、さらにはお土産まで頂きました。
情熱のある、しかもフレンドリーな社長さんで気持ちのよいコミュニケーションを取ることができました。
知り合いの工務店の社長さんに
「わさびを栽培している社長がいるのでアイデアを出してもらえないか?」
という依頼を予め受けていたので私なりにいくつかのプランを持参していました。さらにお話を聞きながらいくつも商品化やプラント自体の販売に関するアイデアが浮かんできました。
おそらく、以前の私であれば社長さんから製造やプラント販売の概要を聞いた後ですぐに私の考えを説明していたはずですが、その日は私の考えの説明をすることを主目的にせずに、社長さんと信頼関係を築くことを主な目的にすることにしました。
そのため次の3点を心がけました。
1.話をよく聞く。
2.バックトラックを入れる。
3.ミラーリングを行う。
まず、話をよく聞くですが、相手の話の途中で口を挟まない。最後まで話を聞くようにして、相手の考え、商品に対する思いをよく聞くようにしました。
また、不明点があれば的確な質問で説明をしてもらうことも心がけました。
そして、バックトラックです。
これは相手の言葉をオウム返しすること。
例えば相手が
「井戸水をくみ上げて注水するのでミネラルが豊富になる。」
と言った時に
「井戸水なのでミネラルが豊富なのですね。」
などと合いの手を入れます。
人は自分のことを分かってほしい、話を聞いてほしいと思っていますが、バックトラックをすると相手は「自分の話をちゃんと聞いてくれている」と感じます。
(もちろん、本当にちゃんと聞いていないとバックトラックできません。)
そして、ミラーリング。
人は自分と似ている人に親しみを持ちますが、姿勢や身振りを相手と合わせるようにすると、相手は親しみを感じるようになります。
そのため、私は相手の社長さんの身体の向き、傾き、手振りを注意深く観察して真似していました。(もちろん、ちゃんと話を聞きながらです。)
約1時間ほどテーブルでお話を伺いましたが、おそらく、相手の社長さんは私に親しみを感じてくださったと思います。
その後、忙しい中新しいわさびプラントに案内して頂き、プラント内を全て説明して頂き、その場で引き抜いた大きな大きなわさびをプレゼントしてくださいました。
昼食の心配までして頂き、美味しいコーヒーまで2杯もご馳走になりました。
社長さんが私に対してよくない印象を持ち、心の壁ができていたらおそらく最初の1時間で分かれていたはずです。
そして、次にお会いする時には私の話をきっとよく聞いてくださるはずです。
なぜなら、好意と親しみがお互いの心に芽生えたからです。
(初対面の相手が自分のことを好いてくれたかどうかは感覚で分かりますよね。)
どうしてもお客さんや交渉相手を前にするとつい自分の意見や考えを売り込もうとしがちですが、太陽と北風の童話の例えもあるように強く押すだけでは相手は心を開きません。
相手に自分のことを理解してもらおうと努力しているのになかなか相手に心を開いてもらうことが出来ない時には、自分の論理や熱意、話の内容に問題があるのではなく、それ以前に相手のとの信頼関係が築かれていないケースが多いものです。
いそがば、まわれ。
仕事相手でも友人でも相手と良好なコミュニケーションを取りたいと思うなら、そのベースになるのは信頼と好意です。
PS.
小さな会社やお店の商売心理学
http://www.middleage.jp/sinridvd/sinridvd.html